DUAL LIFE PRESS デュアルライフプレス

無理せずにできるところから田舎暮らしをしたい。 二地域居住を実現するヒントや情報をお届けします。

カテゴリ: 自然環境を守る

地元武蔵野で行われた
C.W.ニコルさんの講演会に行ってきました。

ニコルさんといえば、以前取りあげましたが
黒姫で「アファンの森」という
森林再生プロジェクトを手がけています。


ニコルさんは英国・南ウェールズの生まれです。
おじいさんがニコルさんに話す故郷の森は
夢のような憧れの場所でした。

でも、ニコルさんが生まれる前にはすでに
産業革命が到来し、石炭が採掘され
鉄道に敷設する枕木の需要のために
森がどんどん失われていくんですね。

そして、森は一般庶民が
自由に入れるところではなくなりました。
貴族だけが狩りのために
サーモンやキジ、ウサギ、鹿などを狙って遊ぶ
立ち入り禁止の場所になったのです。

第二次世界大戦のころになると
石炭は石油に代わります。
炭鉱は失業者であふれ、
廃墟のようになっていきます。

炭鉱のある町に生まれ育った
ニコルさんにはそれが原風景なんです。

幼い頃、ニコルさんは
北極探検隊の16ミリ映画を見て
戦争をしない、工場をつくらない民族である
イヌイットに強烈に惹かれるようになります。

結果的に、ニコルさんは両親の反対を振り切って
17歳のときに北極探検隊(カナダ水産調査局北極生物研究所)の
お手伝いに加わることになるのですが、
それはそれは感動的な日々だったと
身ぶりを添えて話してくれました。

カナダ水産調査局の極地探検が一段落し
22歳になってから、ニコルさんは初めて日本にやってきました。

14歳から柔道を学び、空手に憧れを抱き
東京の空手道場に修行に来たのだそうです。

東京での生活は、これまで体験してきた自然環境とは
まったく異なり、耐えられないものがありました。
見かねた同僚が山に連れて行ってくれた。
かんじきを履いて、というからには冬山ですね。

そこでニコルさんは感動します。
落葉樹の大木が雪のなかにあるという光景に。

英国では雪が降らず、ヨーロッパでも
雪が降るような場所には針葉樹しかありません。
日本の山は東京から数時間で行けるだけでなく、
そこには英国では970年前に絶滅してしまった
野生の熊がいました。
また、貴族でもない普通の地元の人が
キジや鹿、山菜、きのこを自由に採って食べている。

「日本はすごい!」

これが、ニコルさんが日本に住み始める
動機になったのです。


ニコルさんは1980年に黒姫に居を構えます。

02年には1万坪の山野を自費で購入し、
荒れた森の自然を復活させるプロジェクトを始めます。

その後、土地を買い足して4万5000坪になり、
現在は財団に寄贈して9万坪にまで森は広がりました。

アファンの森には絶滅危惧種の
動物が26種類戻ったといいます。
山菜は137種、キノコは400種類以上を確認。
フクロウも戻ってきた。

いまではアファンの森で採れた木材で家具をつくり、
家は純国産の材木で建築しました。

それから養護施設に預けられた
子供たちを森へ連れていくプロジェクトも行っています。
親がいるにもかかわらず
施設に預けられる子供は
7割にも達します。

森では木に吊るされたロープに登ったり
アーチェリーをしたり、川遊びをしたり
ご飯をつくったり、動物や昆虫を観察したり……

すると、彼らの心の窓が開いていく。

森は周囲の自然環境を変えてくれるだけでなく
傷ついた心までをも癒してくれる。

ドイツの森の面積はほぼ日本と同じですが
ドイツは木材を自給自足しています。
林業に携わる人々は100万人。
一方の日本は5万人。
それも60代以上がほとんどです。


「日本の森はつくり直せる」

森を再生することが、
水や食料の問題を解決へと導き
人間性を回復することになるのだと
ニコルさんは言います。

日本、というのは人だけでなく、
この国のトンボや鹿、アリ、鮭、スズメ……
こうした生き物や樹木、すべてが日本なのだと。

北に流氷、南にサンゴ礁があるのは
日本だけ。

311以後であるからこそ
ニコルさんの言葉が深く心に沁み込んできました。



兵庫県丹波市青垣町で
農村景観を取り戻すために
人工の針葉樹林を雑木林に復元する試みが
行われています。

運営主体となるのは地元東芦田の村おこしグループ「江古花園」
これまで築180年の古民家のカヤの葺き替えや
周辺の田んぼをハス園にしたりと、
農村景観の復元に取り組んできました。

この古民家住宅の裏山2ヘクタールのヒノキ林を伐採し、
コナラやアベマキ、クヌギ、ヤマザクラ、エノキといった広葉樹に
林相転換するプロジェクトです。
県からの助成を受け、2010年度から5年かけて
里山の再生を目指します。

高度経済成長時代、
住宅建設のための木材需要に応えるため
成長の早いスギやヒノキが植林されました。
現在の山林の8割がこうした人工林で、
花粉症の原因とも考えられています。

国産材の需要の減少により林業が停滞し、
人工林に手が行き届かなくなっていることから
こうした山を再生させる取り組みは
非常に注目されるところです。


広葉樹は昆虫や動物のエサとなり
人に燃料や肥料をもたらします。

里山の復活は経済効率よりも
多くの実りを与えてくれることが実証されるといいですね。



瀬戸内海にあるハートの形をした島で、
漁業と有機農法を生業として
住民500人ほどが暮らす祝島。

ここで自然エネルギーを使って
自立することを実践的に示そうという
プロジェクトがはじまっています。

「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」
名づけられ、この事業を推進する主体として
「祝島千年の島づくり基金」が発足しました。

母体となったのは、
「上関原発を建てさせない祝島島民の会」。
過去28年以上にわたって、
島の対岸の山口県上関町に建設が予定されている
中国電力上関原発の反対運動を続けてきました。

祝島の「いのちの暮らし」を守るため
新たなアクションとして
2011年1月14日に発足したのがこの基金です。

期せずして、東京電力による
放射能漏れ事故により
耳目の集まるところとなりました。

基金では
「1% for 祝島」というサポーター制度を発足。
活動費用となる寄付を募集しています。


このプロジェクトの発足に合わせ
「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画が
全国を巡回上映されています。

スウェーデンで持続可能な社会を構築する人々の取り組みと
上関原発計画に向き合う祝島の人々を描いた作品。

こちらにも目を向けていきたいと思います。


イギリス・ウェールズ出身、作家のC.W.ニコルさんが
長野県の黒姫に居を構えておられるのは知っていたが、
里山の環境を保全するために、自ら少しずつ土地を買い増し、
森を拡張する運動をしているのは知らなかった。

ニコルさんの考えに共鳴する人たちによって
「NPO法人アファンの森」が2001年6月に生まれ、
現在は「財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団」として
活動を続けている。

荒れ果てた放置林のヤブを刈り払い、
枯れた木を伐採して風通しをよくし、
その風土に合った木を植樹して森を再生していく。

人が自然に積極的に関わっていくことで
森や林の「生命の環」がバランスを保ち、
すばらしい環境に変えていくことができる。

手をかけるというのは何も自然を破壊することではなく、
そこに生息する植物や動物にとっても
有益であることを教えてくれる。

財団が管理する森はまだ十分な大きさではなく、
生き物のための森という考え方に基づいているために
一般に開放はされていない。
人が入ることで生態系が簡単に変わってしまうという。

それでも年に1回、
サポーターに対して森を見学する機会を設けている。

日本で自然を維持するということがどれだけ難しいかを
ニコルさんは身を持って体験している。
それだけに95年に日本国籍を取得した意味は重い。

こうしたネットワークが広がっていくことが
豊かな未来へつながっていくのだと思う。

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